水稲準奨励品種「中部糯91号」の生育特性ともち質特性

[要約]
 「中部糯91号」は成熟期が「日本晴」と同程度の早生種である。短稈で、穂数は多く、耐倒伏性に優れ、穂いもちに強い。収量性はやや優れる。もちの食味は優れ、 特にもち加工適性に優れている。

 農産研究所・栽培部・作物品種研究室 [連絡先]092-924-2937
 豊前分場・普通作物・野菜研究室   [連絡先]09302-3-0163
 [部会名]農 産 [専門]育 種 [対象]水 稲  [分類]普及
 
[背景・ねらい]                                
 福岡県産米の消費拡大や評価の向上を図るために需要の高い優良品種の作付け推進が重要となっている。
 このような背景において、成熟期が「日本晴」クラスの早生種で、いもち病に強く、耐倒伏性を有し、もち適性の優れた良質糯品種の育成・選定が強く望まれている。(要望機関名:農業振興課:(H7) 田川普(H10))
 
[成果の内容・特徴]
  「中部糯91号」(交配組合せ:「愛知糯60号」/「中部35号」愛知農総試山間農業研究所育成)は「ハクトモチ」に比べて次のような特性を有する。
 1 出穂期は4〜5日、成熟期は7〜8日早い、日本晴と同程度の早生種である(表1)。
 2 稈長は9cm程度短く、穂長は同程度で、穂数は多い中間型の草型である(表1)。
 3 耐倒伏性は優れ、やや強である(表1)。
 4 穂発芽性は中で、耐冷性は強である(山間農業研究所のデータによる)。
 5 穂いもち圃場抵抗性はやや強く、いもち病抵抗性遺伝子はPia,iを持つと推定される。(表1)。
 6 収量性はやや優れ、検査等級は同程度である(表1)。
 7 食味は「サイワイモチ」より明らかに優れる。もちの白度が高く、特に硬化速度は早く、鏡もちにしたとき形くずれがなく、つき上がりの粘り、腰、光沢が良好で、加工適性が優れる(表2、3)。
 8 アミログラム特性の糊化開始温度は高く、最高粘度、ブレークダウンは同程度である(表4)。
 
[成果の活用面・留意点]
 1 「中部糯91号」は早生の良質糯品種として「サイワイモチ」にかえて県下の山ろく地〜中山間地及び一般平坦地で普及が図れる。
 2 刈り遅れになるとうす茶米の発生が多くなり、外観品質が低下するので適期収穫に努める。
[具体的データ] 

[その他]
 研究課題名:水稲奨励品種決定調査
 予算区分:経常
 研究期間:平成10年度(平成6〜10年)
 研究担当者:松江勇次、尾形武文、佐藤大和、内村要介
 発表論文等:平成10年度 福岡県農業総合試験場作物部会夏作試験成績概要書