二毛作型大規模稲作経営における湛水直播栽培導入の効果

[要約]
 水稲作付15ha規模の二毛作型大規模稲作経営に湛水直播栽培(条播)を組み入れた営農モデルでは、所得は1,400万円程度で移植栽培体系と比較すると5%減少するが、労働競合の最も激しい6月の労働時間を13%、年間労働時間で3%削減できる。

 企画経営部・経営情報課   [連絡先]092-924-2936
[部会名]農 産 [専門]経営   [対象]稲類  [分類] 指導
 
[背景・ねらい]
 水稲作付面積15haの現地試験農家を素材にしたシミュレーション分析において、湛水直播(条播)栽培は、二毛作型大規模経営の場合、移植水稲の中生種と晩成種の一部が3対1の比率で転換することで、移植栽培体系での規模限界を拡大できることを明らかにした(平成8年度農業関係試験研究の成果)。ここでは、湛水直播栽培を組み入れた二毛作型大規模稲作営農モデル(以下営農モデル)を策定し、同一規模での直播栽培の導入効果を検証する。なお、営農モデルの水稲作付面積は、県内の二毛作型大規模稲作経営階層の15haとした。分析にはFAPSシステム(東北農試:南石)を利用した。(要望機関名:飯塚普(H7))
 
[成果の内容・特徴]
 1 営農モデル
  湛水直播栽培を導入した二毛作型大規模稲作営農モデルは、水稲作付規模15haの中型 機械化体系である(表1)。直播栽培の作付面積は4haで、大麦との二毛作である(図1)。
 2 直播栽培導入の効果と特徴
  (1)営農モデルによる年間労働時間は、移植栽培体系より3%(95時間)削減される。労働時間の削減は6月に集中し、移植栽培体系で最も作業競合の激しい6月の労働時間 1,109時間を、966時間に13%削減することができる。
  (2)5月下旬から6月下旬の農繁期労働を平準化できるため、春の農繁期労働を臨時雇用に依存している二毛作型大規模稲作経営では、臨時雇用確保の負担を軽減できる。
  (3)経営全体の所得は1,400万円程度で、移植栽培体系より5%(79万円)減少する。水稲10a当たり所得は78,450円で、同じく5%(4,250円)減少する。
  (4)水稲の10a当たり生産費は、102,500円で移植栽培体系とほぼ同等である。
 
[成果の活用・留意点]
 1 二毛作型大規模稲作経営に直播栽培を導入する場合の指標として活用する。
 2 直播栽培の単収を移植栽培並にあげることによって、移植栽培と同等の所得を確保することができる。
 
[具体的デーなど]
 
[その他]
 研究課題名:新技術を組み入れた個別大規模経営体の営農モデルの策定
 予算区分:国庫(地域基幹)
 研究期間:平成10年度(平成9〜10年)
 研究担当者:中原秀人、藤吉 臨
 発表論文等:平成10年度九州地域試験研究成績・計画概要集−農業経営−