単作型大規模稲作経営における湛水直播栽培導入の効果

[要約]
 水稲作付20ha規模の単作型大規模稲作経営湛水直播栽培(条播)を組み入れた営農モデルでは、所得は1,690万円程度で移植栽培体系と比較すると5%減少するが、4、5月の労働時間をそれぞれ15%、12%削減でき、春作業の省力効果が高い。

 企画経営部・経営情報課 [連絡先]092-924-2972
[部会名]農 産 [専門]経営   [対象] 稲類  [分類] 指導
 
[背景・ねらい]
 水稲作付面積30haの現地試験農家を素材にしたシミュレーション分析において、水稲湛水直播(条播)栽培は、単作型大規模稲作経営の場合、普通期早植栽培から転換することで、移植栽培体系での規模限界を拡大できることを明らかにした(平成8年度農業関係試験研究の成果)。ここでは、湛水直播栽培を組み入れた単作型大規模稲作営農モデル(以下営農モデル)を策定し、同一規模での直播栽培の導入効果を検証する。なお、営農モデルの水稲作付面積は、県内の単作型大規模稲作経営階層の20haとした。分析にはFAPSシステム(東北農試:南石)を利用した。(要望機関名:飯塚普(H7))
 
[成果の内容・特徴]
 1 営農モデル
  湛水直播栽培を導入した単作型大規模稲作営農モデルは、水稲作付規模20haの中型機 械化体系である(表1)。直播栽培の作付面積は5haで、移植栽培体系での普通期早植栽 培からの転換である(図1)。
 2 直播栽培導入の効果と特徴
  (1)営農モデルによる年間労働時間は、移植栽培体系よりも3%(124時間)削減される。労働時間の削減は4月、5月に集中し、それぞれ15%、12%低下する。
  (2)営農モデルでは、苗箱播種回数を3回から2回に、播種、育苗労働時間を17%(75時間)削減できる。大規模稲作経営にとって苗箱播種は、1日に大量の労働力を必要とすることから、苗箱播種回数の削減は臨時雇用確保の負担を軽減できる。
  (3)経営全体の所得は1,690万円程度で、移植栽培体系より5%(80万円)減少する。水稲10a当たり所得は、80,250円で同じく4%(3,730円)減少する。
  (4)水稲の10a当たり生産費は、98,010円で移植栽培体系とほぼ同等である。
 
[成果の活用面・留意点]
 1 単作型大規模稲作経営に直播栽培を導入する場合の指標として活用する。
 2 直播栽培の単収を移植栽培並にあげることによって、移植栽培と同等の所得を確保することができる。
 
[具体的データなど]
 
[その他]
 研究課題名:新技術を組み入れた個別大規模経営体の営農モデルの策定
 予算区分:国庫(地域基幹)
 研究期間:平成10年度(平成9〜10年)
 研究担当者:中原秀人、藤吉 臨
 発表論文等:平成10年度九州地域試験研究成績・計画書概要−農業経営−